
「木」と暮らす、「木」と生きる
巷では、スーパーでも雑誌でも「自然素材」や「オーガニック」などのキーワードがあふれてますね。
本当にオーガニックなものって、ちょっと値段が高かったりするのですが、最近はなんでもかんでも植物由来になってきて、手軽に手に入れられるようになったような気がします。さらに食べ物だけでなく、化粧品や洗剤などにも浸透してきて、この健康ブームの影響なのか、なんでもカロリーオフ、ノンシリコン、減塩になっていますよね。
別に健康ブームになるのは悪くないのですが、海外セレブやモデルたちがこれらをなんだかお洒落に取り入れているものだから、とりあえずやってみようかな、という人が多いのではないでしょうか。
でもその一方で、有害な接着剤を大量に使った安い家具を使っていたり、100円ショップで大量に購入して使い捨てにしたり・・・結局は新しいものが大好きな私たち。
「おもてなし」「もったいない」文化で世界から称賛される日本人、
大量生産、物で溢れかえる生活をする日本人。
矛盾しているようですが、どちらも日本人の特長ですよね。
健康ブームの最中ですが、ブームをきっかけに考えて欲しいことをこれから書いてみようと思います。
一番身近な自然素材は?
さて、身の回りをぐるっと見渡してみましょう。その中で自然素材のものはありますか?ちなみに私の前には、自然素材で編まれたカゴがあります。
では、次に近くの壁をじーっと見てみて下さい。何か自然素材のものは見えますか?実は、意外と意識していないと思いますが、あなたが住んでるそのお家。壁の向こうに自然素材が隠れていますよね?そう!お家の骨組みの木材がたーくさん!
しかもその木材たちは、今も生きているのです。あ、マンションの方には見えません。ごめんなさい。
これって意外と日本の特長だと思いませんか?
世界のお家を見てみると、ヨーロッパは石造りだし、レンガで家を造る国もあります。日本のように木材を贅沢につかった建築って、あんまりないですよね。住む家にこんなにたくさん木材を使えるなんて、日本人は恵まれています。
それは日本は世界でも有数の森林国だからなのです。国土面積の68.5%が森林ということで、これはフィンランド、スウェーデンに続き、世界第3位の森林率だそうですよ。(参考サイト)
国土の3分の2に相当する面積が森林だなんて驚きですよね!
これは戦時中の過剰な伐採による森林資源の減少を反省し、戦後スギやヒノキなどの針葉樹林を中心に人工的に植林を行った結果、このような森林国を維持することとなったのです。そしてその人工林が成熟し、いま伐採期を迎えています。しかし長い年月をかけて育てた森林を、伐採して、国内で消費すれば何も問題なかったはずなのですが・・・
最近は安価な輸入木材が増加したことと、林業の衰退により、放置されてしまった森林が全国にたくさんできてしまったのです。間伐などの手入れをされなくなった森林は、日光が地面まで届かなくなり、不健康な森に変わってしまいます。
適度に人の手を加えて森の健康を守ることは、巡り巡って私たち人間の健康を守ることにもなるのです。そう考えたら、あなたのお家の見えない木たちが愛おしく思えてきますよね。
世界に誇れる「木」の文化
昔からこれだけ森林に囲まれて生活してきた日本人は、木の特性を知り尽くしています。
「木なんてすぐに腐るし、何年も持たないでしょ」
そんなことを思っているあなたに、悲報です。あなたが負けです。日本には何百年もそこにあり続ける木造建築の数々があります。
たとえば奈良県にある法隆寺。世界最古の木造建築というのは言うまでもなく有名な話ですよね。でも考えてみて下さい。この湿度の高い日本に、建てられてから1000年以上も経つ世界最古の木造建築物があるってすごくないですか?
そこには木の特性とうまく付き合う日本人の技術と知恵が隠されているのです。
「スギとクスノキは舟に、ヒノキは宮殿に、マキは棺に使いなさい。」
日本書紀にはこのような記述があるそうです。木なら何でもいい訳ではなく、どの木がどれに適しているのかをそんな昔から知っていたのですね。この知恵は今でも受け継がれており、現代でも寺社仏閣を建てる際にはヒノキを使用しているようです。
ヒノキはとにかく耐久性に優れています。驚くことに、切られたときからどんどん強度を増していき、200年経った頃に最高の強度をもち、その後1000年ほどかけて、切られた当時の強度にまで落ちるそうです。
つまり切られたときと、1200年後のヒノキの強度が同じなのだそうです!恐るべしヒノキ。腐るどころか強くなるなんて意味分かりません。しかも1000年以上経ったヒノキを削っても、あのいい香りがするんですって。
こうしたヒノキに支えられて、日本の木造建築は世界に誇れる遺産となっているのですね。これから旅行でお寺を見に行くときは、そんなところに注目しちゃいそうです。それも楽しみ方の一つかもしれません。皆さんもぜひやってみてはいかがでしょうか。
(参考サイト:1300年以上の歴史を持つ法隆寺を支える材はヒノキ)
「木」から生き方を考える
人は、ちょっと疲れたときに自然を感じたくなりますよね。自然に触れるとなんだか優しい気持ちになりますよね。元気をもらいますよね。
私たちはどうでしょう?何か自然にしてあげられているでしょうか?
リビングでくつろいでいるとき、あなたは知らないうちに「木」に包まれています。木が呼吸した空気で私たちは呼吸をしています。
安さも大事だけど、それはあなたに適したものなのかもう一度考えてみて下さい。そして実際に触れてみて下さい。そうすることで、あなたに合った本当の自然素材が見つかるかもしれませんよ。
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